そろそろハンドメイド系のペダルについても書きたかったので、近代の国産ハンドメイドエフェクターの代表作であるMaestroAntiqueRevised(MAR)をご紹介します。
Shun Nokina氏が代表を務めるLeqtique(レクティーク)によるブランド立ち上げ1機種目となるこのMARは2010年に発売されたTS系Overdriveペダルです。
当時はハンドメイドペダルというと3万円台~が比較的当たり前の認識でしたが、こちらはハンドメイド、ハンドペイント、アルミ削り出し筐体というスペックを携えながらも14,700円という価格で発売され話題になりました。当時のペダル好きで買わなかった人のほうが少ないんじゃないでしょうか?
買わないにしても知らない人はいないくらいの話題機種、人気機種でした。
トップの塗装はSwirl(スワール=渦の意味)Paintと呼ばれ、1台1台手作業で行われているためすべての個体の見た目が異なるのも特徴です。
しかし塗装は非常に剥がれやすく、現存する中古品の殆どはビンテージレリックになっていますね。
自分の個体も特にサイドや角の塗装は剥がれています。
サウンドは一口にTS系と言ってもその中でTS10のサウンドをベースにしているようです。
ですが、個人的にはもっとモダンさや扱いやすさを感じるTSペダルだと思います。
コントロールは一般的なVol,Gain,Toneの3ノブですが、まずGainを絞り切ってもそれなりに歪みます。
といっても嫌なイメージはなく、むしろアンプを自然にブーストしたときのような歪みでとても心地よいです。
また、全体的なトーンはTS系より広く感じます。ローもしっかり太く、高音の抜けもよく、弦のアタックもしっかり出ます。この辺りはランドグラフのDODっぽさも感じます。オリジナルのTSは敢えてレンジを狭くすることで中域感を出していますが、MARでは帯域を残しつつも中域のジューシーさスムーズさを出しています。これに関してはビンテージ志向かどうかにも左右されますが、今の時代に使うならこのレンジ感は非常に使いやすいと思います。
またVolもオリジナルのTSより大きく感じます。というかTSはオリジナルの音量が結構低いのでVolフルテンになりがちです。こちらは12時位でいい感じの音量になってくれますね。
割りとコントロールはどこでもいい感じのサウンドが出ます。自分は上の写真のようにGain絞って常にONにするような使い方が好きです。
こちらの動画がサウンドを分かりやすく紹介しています。
動画からも分かるように結構歪みます。
内部はこんな感じです。
ユニバーサル基板のようですがプリント基板になっています。赤いPRPの金属皮膜抵抗、カーボンコンポジション抵抗、OSコン、WIMAコンデンサとオーディオ用パーツをふんだんに使われていますね。
ここで少し個人的な考えですが、エフェクターは高級、高品質なパーツを使ったからと言って音が良くなるわけではありません。ただ、見た目やパーツの信頼性という意味では価値があります。自分はパーツ自体が結構好きなので色々と言及することは多いですが、それらは音の良さに直結しているわけではないということはご理解ください。それ以上に設計者の定数決定や回路上のテクニックのほうが遥かにサウンドに影響を及ぼしています。
脱線しましたが、the国産ハンドメイドって感じのパーツ構成で懐かしくなってしまいますね。
スイッチ周りはハンドワイヤリングされています。バッテリースナップはKeystoneの高品質なものが使用されていますが、これって数年前にめちゃくちゃ値段上がってなかなか最近では使っているところ無いと思います。
DCジャックの端子は絶縁のために特殊なホットボンドで固めてあります。
細部にまで製作者のこだわりが見えて、こういうペダルは音だけでなく、見ていてもとても楽しいです。大量生産にはそれの良さがありますが、ハンドメイドの質感もやはり好きですね。
ちなみに自分の個体は初回ロットのものでシリアル#51です。
当時これを14,700円で買えたんだからいい時代でした。とはいえ安すぎでは?という気持ちにもなりますが笑
普通に今でも3万円台くらいで出たら即購入をオススメできる1台です。でも塗装は剥がれないようにして欲しいし機種名、メーカー名、コントロール名は記載してほしい。
中古だと状態次第では結構安く取引されているものもあるので絶対に1台持っておいて損はないペダルです。コスパがいいとか言われますが、値段なんて関係なくて単純にペダルとしてのクオリティが最高の1台です。
大好きなペダルなのでちょっと熱く語ってしまいました。
それではまた~
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